町田音楽ネットワーク
今月の音楽人
50 2005年9月 最終号)

何も存在していない所に人の心を動かす「モノ」を創り出す。
その「モノ」には誰も触る事ができないし終わればその存在は消えてしまう。
そんな「モノ」をこの地域で創り出してきた人々を紹介していきたい。


―  ミュージシャン 日倉士 歳朗 さん 



 日本のギタリストの中でも、聴いた瞬間に「この人だ!」とわかってしまうほどの太い(!?)オリジナリティと個性を感じさせるミュージシャンはなかなかいない。愛器である1920年代〜30年代製のワイゼンボーン(ラップスチールギター)から情感あふれるメロディーがつむぎ出される時も、フルヤOMタイプ(*今月の音楽人No.18)を力強くフィンガリングしながら男くさいブルースを歌う時も、そこには「日倉士節」とも言うべき独特の世界があるのだ。今月の音楽人は日本を代表する「スライドマン」、大和市西鶴間在住のミュージシャン 日倉士歳朗 さん。

 日倉士さんのプロミュージシャンとしての経歴は1970年代の伝説のアメリカンロックバンド「BOB'S FISH MARKET」にギタリストとして加入したところから始まっている。その後も井上憲一(ケニー井上、ex 夕焼け楽団、サンディ&サンセッツ)や敦賀隆(ex.BOB'S FISH MARKET)らとの活動、ブレッド&バターをはじめとする多くのシンガーのツアーサポートやスタジオワークの中に日倉士さんの名前を発見することができる。

しかし、日倉士さんは「シンガー&ソングライター」でありたいというスタンスをずっと持ち続けているミュージシャンなのだ。だから今回も「肩書きは何にしましょう?」という問いに「ギタリストじゃなくてミュージシャンで。」とはっきりとお答えになった。BOB'S FISH MARKET時代から交流のあった久保田麻琴(ex 夕焼け楽団、サンディ&サンセッツ)はそんな日倉士さんの曲をはやくから取り上げていたし、ファーストソロアルバム「I'm Slidin'」(1990)も久保田麻琴のバックアップでリリースされている。そしてそのスタンスは今も変わらず、自ら曲を書き計4枚のソロアルバムをリリースし、ライブでも絶妙のMCで曲を紹介しながら歌いまくり弾きまくるのだ。

 現在の日倉士さんの活動の方向性もノンジャンルで面白い。その一つはジャズ界の大御所古澤良治朗との活動。小さなライブバーで演奏していて「お前のブルースは面白い」と声をかけられいつの間にか一緒にライブをするようになった。映画「大往生」(原作:永六輔、監督:藤田博)のサウンドトラックで異ジャンルのミュージシャンたちとともに織り成す不思議なバンドサウンドはその雰囲気を伝える珍しい音源だ。

これまた日本を代表するジャグバンドMad-Wordsの活動もコンスタントに続いている。2003年には4枚目のアルバム『BEST!』をリリース。Mooney(Vo,G,Banjo,WB)、TETSU(Vo,Ag,Magic,Toy)、石川二三夫(Harp)、YONO(Jug,WTB)という濃いーミュージシャンたちとのごきげんな演奏をまとめて堪能できる一枚だ。

 今年の活動で目立つのは、最近 夏川りみのバッキングギタリストも努めている佐藤克彦(*今月の音楽人No.23)とのコラボレーション。5月にリリースしたインストゥルメンタルアルバム『海風』はもちろん、この二人組のライブも見逃せない。『アコースティックギターマガジン Vol.25』(リットーミュージック、2005年8月)には二人の語り口がそのまま再現された不思議な(!?)対談とアルバム未収録音源、おまけに譜面まで紹介されている。この二人のコラボレーションはもしかしたら運命の出会いかもしれない。近い将来、佐藤克彦プロデュースの日倉士歳朗ソロアルバムが完成する可能性も十分ありそうだ。(文:城川隆生)


<= 日倉士さんの愛器たち
奥:テスコ×2、ドブロ、フェンダー
前:KANOPUS、WEISSENBORN(ラップスチール)、フルヤ
床:テスコ、リッケンバッカー(ラップスチール)
エピフォンマンドリン


sachikoとのDuoLIVE =>
2005年リリースアルバム
 
左:「Aloha Breeze」(フォーライフ)
 =>松本ノボル(*今月の音楽人No.3)他プロデュースによるカヴァーコンピレーションアルバム。松本ノボル(スラッキーギター)とのコラボレーションでS.BISHOPの名曲On And Onをカバー。
右:「海風」(日本晴)

日倉士歳朗 ライブスケジュール
9月
 2日(金)綱島Blue Corn Cafe(問)045-531-0700
 3日(土)茅ヶ崎Frockie's(問)0467-87-6526
   (with 佐藤克彦&sachiko)
 4日(日)横浜Thumbs Up「ヨコハマ・スキャンダラスナイト Vol.3」
   (Angels&sachiko)(問)045-314-8705
  共演:ミラクルトーンズ・/タマシロマーケット/Angels/sachiko&日倉士歳朗
【九州ツアー】
 8日(木)唐津RIKI HOUSE(問)0955-73-7142
 9日(金)福岡大橋CLUB49(問)092-541-9356
 10日(土)飯塚Vintage(問)0948-24-9876
 11日(日)佐世保ガーネット(問)0956-22-4352
 12日(月)長崎Chez Bonzo(問)095-821-5220
 14日(水)福岡周船寺タリラリラウンジ(問)090-4772-4609 共演:ヒバゴンミユキ
 16日(金)大分音遊び(問)0975-42-4610
 17日(土)熊本阿蘇坊中Studio 129(問)軽木090-3661-8866
 18日(日)鹿児島Mojo(問)099-226-7715
 19日(月)鹿屋 銀河亭(問)東ユージ090-4987-3701
 21日(水)鹿児島姶良町ムッシュアーミー(問)0995-65-2905
 22日(木)宮崎ja・da(問)0985-28-1418
 23日(金)八代Come Shine(問)0965-33-3777
 24日(土)人吉BEARS CAFE(問)0966-22-1712
 25日(日)久留米Vinotheque(問)0942-39-1514


 29日(木)本厚木Butchie's(問)0462-23-4210
10月
 7日(金)上越Variant(問)0255-25-9105
 8日(土)岡谷Club the Monkey(問)0266-22-0098
 9日(日)レノンとカフカの音楽祭(問)レノン0265-73-1289
  伊那市知立野外センター(伊那スキーリゾート下)芝生広場
 15日(土)鎌倉Tipitina(問)0467-25-4588
 26日(水)鶴間ボナンザ(問)0462-63-7252
MAD-WORDS in 北海道
 9月30日(金)札幌 Bar流吉(問)011-219-2319
  3周年記念EVENT「札幌JUG BAND FESTIVAL」
  共演:インターナショナル リトルコンボ・ジャイアン リサイタル
 10月1日(土)月形町 はな工房大ホール (問)0126-37-2188
  T&N's 20th Wedding& Kitune's DOME 10th Opening ANNIVERSARY EVENT
  共演:MOJO HOUSE・田中まこと・Morgan's Bar 他
 10月2日(日)旭川 銀座ライオン(問)166-24-7211


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