町田音楽ネットワーク
今月の音楽人
(18 2003年1月号)
何も存在していない所に人の心を動かす「モノ」を創り出す。
その「モノ」には誰も触る事ができないし終わればその存在は消えてしまう。
そんな「モノ」をこの地域で創り出してきた人々を紹介していきたい。
― フルヤギター工房 古谷 武久 さん ―
「西アフリカにキンブリーという楽器があるんです。3弦の楽器なんですが、材に使う聖木のイチジクを切り倒す所から祈りと儀式がはじまり、最後まで神聖なものとして扱われるんです。モノには心がある、楽器には魂が宿るものだという、そういう所を突きつめて作って行きたい。」・・・・・今月の音楽人 本厚木の弦楽器職人 古谷武久さんはこう語ってくれた。 古谷さんの人生は太平洋を行ったり来たり(?)。神奈川県県央の出身ではあるが、2歳から小学校入学まではカナダ西海岸のバンクーバー、小学校3年からハイスクール1年まではアメリカ東海岸のボストン。大人になって楽器職人を目指してからはアリゾナ州フェニックスのRoberto Venn School of Luthiery。卒業後はサンフランシスコ在住のルシアー(luthier=ギター作る人)Ervin Somogyi(アーヴィン ソモギ)のもとで短期間ながらクラフトマン修行。アーヴィン ソモギのギターと言えばマイケルヘッジズ、中川イサト、ウィンダムヒルレーベルのアーティスト達といったフィンガースタイル系のギタリストがこぞって愛用している。 ソモギさんやそのお弟子さんたちとは現在も交流があって技術的なことや木材のことなど様々な情報交換をしていると言う。 日本へ帰ってきてからは、木工技術を高めようと東京の指物職人(ウッドワーク長尾)さんのところで1年半家具製作を手伝わせてもらった。(日本には世界がうらやむような木工や刃物の伝統があって、その技術も大切にしていると古谷さんは語る。)こうしてマーチン系やギブソン系とは一味違ったギタークラフトの伝統を担う新進ギター職人古谷武久さんが3年前に誕生した。 古谷さんが楽器を弾き始めたのはミドルスクール時代、高校生の頃にはバンドを作って演奏活動を開始、やがてインド、沖縄、東南アジア、アフリカ、日本(なんと学生時代は筝曲部の三味線弾き!)といった世界の音に魅せられて行く。そこに流れるのは「生の音」、つまりアコースティックサウンド。やがてバンド時代から自分で修理していた身近な「ギター」という楽器を一から作ってみたいと思った訳だ。「構造」「材質」「クラフト技術」、アコースティックギターには楽器作りそしてものづくりの原点がある。「モノを作ると言うのはどういうことか?」という哲学的な自問自答をしながら謙虚に対象に向かい、今は亡きお祖父ちゃん(大工さん)から受け継いだ道具をつかってモノに魂を込める。 本厚木と言う微妙な土地柄、すぐにメジャーなミュージシャンがお客様と言うわけにもいかないが、AZUMI、日暮士歳朗、大庭珍太といった渋いベテランミュージシャン(本厚木のライブバー「ブッチーズ」に出演!)の仕事もこなしている。お客様とのコミュニケーションを大切に、要望に沿って丁寧に作った鳴りが良く弾きやすいギター。「ぜひ試奏に来てください。」(文:城川隆生) |
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