町田音楽ネットワーク
今月の音楽人

9 2002年4月号)

何も存在していない所に人の心を動かす「モノ」を創り出す。
その「モノ」には誰も触る事ができないし終わればその存在は消えてしまう。
そんな「モノ」をこの地域で創り出してきた人々を紹介していきたい。


―  相模の風 石原 敏弘 さん ―


 インターネットの可能性?世界に広がっている事は誰でも知っている。また、音楽の世界ではネット上で音楽や情報を配信するのも今や重要な手段だ。この地域にももちろんそんな活動をしている人たちが結構いるはずだ。その中でもローカルエリアネットワークとしての可能性に気付いている人も多いはず。今月の音楽人 石原さんも「相模の風」という地域性を前面に押し出して活動している音楽人だ。

 大野小学校→大野台中学校→県立麻溝台高校 出身、そして今でも相模原を拠点にしている。まさに「相模の風」だ。「相模の風」というのは神奈川・東京を中心とした土着系インディーズレーベル。販売方法はネット上のダウンロード、CDRの販売。ご自分を含めロック系・ポップス系のミュージシャンが参加している。しかし、はっきり言って今の日本でこれを採算ベースに乗せるのは大変な事だ。石原さんの言葉「なかなか聴きたい望みの音楽とは出会わない。出会えない。いい音楽を作ろうと四苦八苦している奴がいる。いい音楽を作っているのに世に送り出せない奴がいる。俺も自分の音楽を一人でも多くの人に聴いて欲しい。」という熱い思いが彼を動かしている。

 石原さんの音楽に対する情熱は小学校時代にさかのぼる。音楽の授業に燃えていた、滝廉太郎の「花」が原点だ、とご本人は言う。そして中学時代、QUEEN、KISS、チープトリック、エアロスミスといったバンドに啓発されてギターを弾きはじめる。高校時代は軽音楽部でハードにアコGをかき鳴らしていたそうだ。現在のようにオリジナル曲を作ったりアレンジやプロデュースを始めたのは20代半ば位からで、現在も「相模の風」のプロデュースとは別にハロロックという「下世話な?」ロックバンドの中心メンバーでもある。

 しかし、そんな石原さんにも音楽に関われない時期があったらしい。1995年、生きるために自営のハウスクリーニング事業「ライブ」を立ち上げてから5年ほどは軌道に乗るまでさすがに動きが取れなかったようだ。そういう時期を経ているからこそ音楽に対する情熱が人一倍なのかもしれない。「相模の風」の代表として全体に気を配りながら、ミュージシャンとしての自分の活動も精力的に行う。そしてハウスクリーニングの仕事。パワフルかつ緻密な人だ。

 ところで、ライブ演奏はともかくインターネットで音楽を発信していると文字情報だけでなく曲を聞いてもらわないと話が始まらないのも事実。やはりそこが悩みの種のようで、今後の展開としては地元密着の方向性をもっと考えることと販路の拡大(CD店など)をはかることで現状を打破するつもりだ。
 
 相模から吹く良質のポップミュージックの風をこれからも期待しよう。(文:城川隆生)

相模の風 参加ミュージシャン】

すみよしたけし&ざっくばらんす
t t y
井上 ともやす
ろくでなし
MOOJA MOOJA



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