町田音楽ネットワーク
今月の音楽人
41 2004年12月号)

何も存在していない所に人の心を動かす「モノ」を創り出す。
その「モノ」には誰も触る事ができないし終わればその存在は消えてしまう。
そんな「モノ」をこの地域で創り出してきた人々を紹介していきたい。


―  ケーナ・サンポーニャ奏者 菅沼 ユタカ さん 


 南米アンデス山脈。6000m級の山々が連なる南アメリカ大陸の屋根だ。インカ帝国に代表されるアンデス文明の文化は、スペイン人の侵略と征服という苦難と悲劇を乗り越え、形を変えながら今も進化を続けている。「フォルクローレ」・・・アンデスから生まれ、世界に発信され、インターナショナルな胎動を見せている音楽文化だ。その動きを支える重要な人物がこの町田にも!さて、今月の音楽人は日本を代表するケーナ(上写真右)・サンポーニャ(上写真左)奏者、南米音楽研究家としても知られる町田市木曽の 菅沼 ユタカ さん。

 菅沼さんは横浜市のご出身で、12年前からの町田市民。ほとんど音楽と接点の無かった菅沼さんがケーナの音色に惹かれたのが高校時代。大学に入学するとさっそく「フォルクローレ合奏団」に入部。学園祭の初ステージをきっかけにケーナを吹き始め、翌年にはもう南米料理屋さんやライブハウスで演奏の仕事を始めていた。本格的な演奏家を目指すようになったのは、学生時代にボリビアから来日したエルネスト・カブールのライブで経験したストレートな表現力とパワー。今まで聞いていたフォルクローレとの違いに驚いた。それ以来、ボリビアが菅沼さんの心の故郷となる。

 大学卒業後、10年間の会社員生活を経たのち、演奏家として独立。エルネスト河本率いる「グルーポ・カンタティ」(〈株〉テイクオフ)のメンバーとして4枚のアルバム(日本版3枚・ボリビア版1枚)に参加。太平洋を越えて地球の裏側まで通いながらのレコーディング、そしてライブ活動を続けた。現在は新ユニット「菅沼ユタカ・セッション」で活動中で、来年初夏にはファーストアルバムがリリースされる予定だ。

 フォルクローレは民族音楽と言われているが、もうアンデス山脈の中だけの化石ではない。世界中の演奏家やオーディエンスのネットワークや相互の影響力が新しいスタイルを生み出す生きた音楽文化だ。その良い例がサンポーニャ。素朴で限られたメロディーしか吹けない楽器だったのが、この20年間に徐々に改良が加えられ、2段及び3段クロマティック・サンポーニャというオールジャンルに対応できる楽器へと進化を遂げた。このサンポーニャ、ケーナに比べて日本ではまだあんまり知られていないのでぜひ普及させたい、というのも菅沼さんの夢の一つだ。

 「征服された民族の『想い』が陽気なリズムの中に込められているんです。でも、悲しくても楽しくても『踊ろう!』というところが南米音楽の楽しさです。」「ボリビアではスペイン語の他に種族ごとにコトバを持っている。それと同じように楽器のバラエティもある。同じケーナでも村ごとにKeyが違うんです。それだけ音楽の深みもあるんです。」「演奏者の息づかいが伝わるような小さな所でこの音楽の素晴らしさを皆さんに知ってもらいたい。」・・・、菅沼さんの熱い思いが伝わる。

 では、最後に菅沼さんのネオフォルクローレ演奏を楽しめるライブをご紹介。自分も演奏したいという人(初心者OK!)は菅沼ユタカ フォルクローレ教室へどうぞ。(文:城川隆生)

12月 4日(土) 19:30>>
20:30>>
21:30>>
フォルクローレ・ライブ・IN・立川
菅沼ユタカ・セッション立川『La−Bamba』
(予約)042-524-5800
ノーチャージ
12月 14日(火) 19:30>>
21:00>>
パパ・サラ 高円寺 『ペンギンハウス』
チャージ2000円+オーダー、03-3330-6294
12月 25日(土) 19:30>>
20:30>>
21:45>>
菅沼ユタカ・セッション定期ライブ@六本木『ノチェーロ』
ライヴセット:2400円、03-3401-6801
1月 29日(土) 19:30>>
20:30>>
21:45>>
菅沼ユタカ・セッション定期ライブ@六本木『ノチェーロ』
ライヴセット:2400円、03-3401-6801


大合奏@菅沼ユタカ フォルクローレ教室 発表会
左から、アルマジロのマトラカ、ケナーチョ(大)、ケナーチョ(小)、ケーナ(リャマの骨)、ケーナ(牛骨)、ケーナ、サンポーニャ、3段クロマチックサンポーニャ、タルカ、チャフチャス。次の写真、低音用サンポーニャ(竹製とプラスチック製)、チャランゴ(もちろんバックはアルマジオ)。そしてサンポーニャをライブで吹く菅沼さん。楽器はまだまだ沢山あります。


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