町田音楽ネットワーク
今月の音楽人
32 2004年 3月号)

何も存在していない所に人の心を動かす「モノ」を創り出す。
その「モノ」には誰も触る事ができないし終わればその存在は消えてしまう。
そんな「モノ」をこの地域で創り出してきた人々を紹介していきたい。


―  Ocarina Workshop Japan 代表 住 政二郎 さん 



 1998年、英国ロンドンのとある教会の中庭、そこは華やかなフリーマーケットの会場だった。その会場の片隅で丸くて青いオブジェをヒッピー風の女性が並べていた。楽器かな? 立ち止まる一人の青年がいた。女性はおもむろにその一つを取り上げ吹き始めた。アメージング・グレイス。「衝撃」的なデュエット・オカリナとの出会い。周囲が真空になるような感覚・・・・・。今月の音楽人はデュエット・オカリナとの出会いを熱を込めて語る町田市森野の住 政二郎さん。

 住さんは町田四小・町田一中出身、もちろん生粋の町田っ子だ。多彩な人である。英語教室の先生、オカリナ教室の先生、写真家、教育社会学の研究者、そしてもちろん演奏家であり、2004年からはOcarina Workshop Japan代表という肩書きを持つ事業者。演奏家としてはフルート、リコーダー各種、オカリナ各種、ティン・ホイッスル、ケーナ、スライドホイッスル、篠笛、他を自在に吹き分ける。ヨーロッパやアジアの街角で演奏活動をしていた時期もある。写真家というのはちょっと意外だが、なんと2002年フランス・パリ写真コンクールに入選しているのだ。

 住さんの楽器との本格的な出会いは小学校3年生の時。大好きだったリコーダーのレッスンを受けるため、当時町田市立ひなた村の職員だった音楽家の奥津林蔵さん(現在は市立子どもセンター”ばあん”館長)のもとへ通い始めた。中学校・高校時代は吹奏楽部でフルートやピッコロを担当。フルート・オカリナ奏者の小山京子さんについてフルートを習っていたこともある。ただし、大学時代は音楽活動をしていなかったそうだ。そしてある日、思い立って大学を1年間休学しイギリスに留学、それが冒頭のフリーマーケットのシーンにつながる。

 その場で2種類のデュエット・オカリナをすぐ購入した住さんは箱の裏書を頼りに製造元のOcarina Workshop へ手紙を出し、日本への紹介活動を手弁当で始めた。みんなにこの楽器を知ってもらいたい! 純粋な人が素晴らしいものに出会った時に取る典型的な行動パターンだ。

 この丸いオカリナは英国生まれ。楽器単体でアンサンブルが可能なデュエット・オカリナと、単音メロディー用の4穴・6穴オカリナがある。日本でよく知られる土のオカリナと比べるとクリアで明るい音色が特徴。そして何といっても吹きやすい。弱い息でも吹けるし、使う指は基本的に両手の中指・人差し指計4本が中心だ。ギターのタブ譜よりもっと簡単なオリジナルの譜面Oc-pix、Oc-boxというのがあって、五線譜の苦手な人でも吹けてしまう。

 住さんは「このオカリナはメディアなんです」と言う。人と人、人と場、場と場をつなげるメディア。それは、このオカリナの普及を目指すことだけじゃあない。音楽教育のあり方や文化のあり方への住さんなりの理念を提案するためのメディアでもある。そして住さんには夢がある。

  「人が集り、音楽する場を作りたい。」(文:城川隆生)



上段:バス・テナー・アルト・ソプラノの各デュエット・オカリナ
下段:6穴オカリナの各シリーズとマイクロオカリナ(上下ともセラミック製)
右:バス・デュエット・オカリナを吹く住さん



左:プラスチック製オカリナと教則本
右:紙製組み立て式(!)カードオカリナ、音程もバッチリ


=> Ocarina Workshop Japan


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