町田音楽ネットワーク
今月の音楽人

14 2002年9月号)

何も存在していない所に人の心を動かす「モノ」を創り出す。
その「モノ」には誰も触る事ができないし終わればその存在は消えてしまう。
そんな「モノ」をこの地域で創り出してきた人々を紹介していきたい。


―  宮ケ瀬サマーフェスタ 代表 青山正和 さん ―
(本厚木「案山子」マスター)

 車で、町田のお隣 相模原市から相模川を越えると厚木市、そこから小鮎川沿いに丹沢方面に向かうと、宮ケ瀬湖のある清川村に到着する。その宮ケ瀬湖畔には野外音楽堂があって、毎年8月初旬に「宮ケ瀬サマーフェスタ」という「環境」をテーマにしたチャリティー音楽祭が開かれている。

 野外音楽イベントというと海のそばや長野県の高原、そして富士山麓あたりが定番だが、こんな近くで、しかも出演者・スタッフともに手弁当のチャリティー音楽祭があった。今までの出演者も井上尭之(g)、ヒダノ修一(和太鼓)、大由鬼山(尺八)、宮之上貴昭(g)&スモーキン、渡辺香津美(g)、ムッシュかまやつ(g)、大槻カルタ(Ds)、金子ゆうた(org)、 梅津和時(sax)、フランシス・シルヴァ(ラテン)、ササキ・コテツ(ハーモニカ)、etc.……というジャンルを越えた一流ミュージシャンたちが中心。このイベントの仕掛け人であり代表が今月の音楽人 青山正和さんだ。

 青山さんは東京都大田区出身、現在は小田急線本厚木駅近くの「案山子」というお店のマスターだ。オルガン(ハモンドB−3)が常設されていてジャズミュージシャンなら知る人ぞ知る老舗である。実は金子ゆうた(org)もアマチュア時代はこのお店でアルバイトをしながらオルガンを弾きまくっていたらしい。

 青山さんのジャズとの付き合いは学生時代にさかのぼる。大学のジャズ研に所属しながら、ギター&ヴィブラフォン奏者として帝国ホテルやキャバレーなどで演奏していた。その時親しくなった帝国ホテルの音楽好きな料理人から特別に料理を教わったというから、それもお店の魅力の一つかもしれない。

 演奏者としては小学生でピアノ、そのうちカントリー&ウェスタンにはまってギター、中学・高校の時はブルーグラスとカントリー、当然ピアノもギターもバンジョーも弾くというマルチプレイヤーで、メンバーに楽器を教えながらバンド活動をしていたというからずいぶん早熟なミュージシャンだ。さて、時まさにハワイアン全盛の時代、青山さんは大学に入学する。でもハワイアンののんびりしたテンポについて行けず、手ごたえのありそうなスタンダードジャズをやるようになったという事らしい。

 でも、今の青山さんは音楽ジャンルなんかまったく気にしない気さくなマスターだ。この「案山子」を始めたのが1975年、サマーフェスタの出演者の多くもこのお店でライブをしたミュージシャンたちだ。サマーフェスタにこのメンバーがノーギャラで出演しているのも青山さんの人徳だろう。

 さて、今年で8回目を終えた「宮ケ瀬サマーフェスタ」だが、実はまだまだ発展途上にあるようだ。だいたいこの辺の音楽好きに聞いてみてもこのイベントを知っている人があまりに少ない。地元自治体も後援し、いわゆるチケット制ではなく協賛券というスタイルで、赤字でも必ずチャリティーにお金を回すという良心的な本当のボランティア運営をしているのだが、お世辞にも大盛況とは言えない現状がある。けれど、今までの苦労を聞かせて頂くと、照明も無かった(!)1回目から着実に成長しているようだ。来年以降も楽しみなイベントであることに間違いは無い。

 丹沢の山あいで、冷たい飲み物と素晴らしい音楽を、芝生に寝転びながら楽しむのは無条件に良い。(文:城川隆生)





2002年度
宮ケ瀬サマーフェスタ実行委員長
山口さん(先輩!)
(洋風居酒屋)

NIKKA HOUSE

案山子


厚木市旭町1-10-2

046-228-9292


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