町田音楽ネットワーク
今月の音楽人

11 2002年6月号)

何も存在していない所に人の心を動かす「モノ」を創り出す。
その「モノ」には誰も触る事ができないし終わればその存在は消えてしまう。
そんな「モノ」をこの地域で創り出してきた人々を紹介していきたい。


―  筝(琴)奏者・創曲者 保坂 由佳 さん ―

 日本発の日本初という音楽を作りたい。もともと持っていないところに引きずり込まれるのはそろそろやめましょうよ。DNAを大切に。・・・・・全くもって正論である。地に足がついた文化とはそういうものだと思う。今月の音楽人は生田流師範という肩書を持ちながら伝統にとらわれることなくオリジナルな音楽活動を繰り広げている筝(琴)奏者・創曲(作曲)家の保坂由佳さんだ。

 保坂さんは町田六小・町田二中の出身、高校も東海大相模高、現在の活動拠点となるスタジオも成瀬駅南口のJ・DNA成瀬が丘スタジオ、とやっぱり地元の音楽人だ。おじいさまは琵琶、おばあさまは茶道、お母様はお琴と三味線の先生という純日本文化的(?)な家庭に生まれ、ものごころがついたときから琴や三味線を徹底的に仕込まれてきた。

 生田流宮城会師範、NHK邦楽技能者育成会第31期卒業、東京芸術大学邦楽科別科卒業という邦楽奏者としての輝かしいキャリアを持ち、そのまま行けば琴の先生としてこの伝統を継承するのが一生の仕事になっていたはずだ。

 でも保坂さんは
伝統の殻を破って新しい音楽人としての人生を歩んでいる。そのきっかけになったのが共立コミュニケーションズ株式会社(広告制作会社)の音楽事業部門J・DNAの立ち上げに乞われて参画した時だ。現在ではJ・DNA RECORDSレーベルの作曲, 演奏, 事業部責任者として活躍中である。

 J・DNA RECORDSの最初のアルバムが保坂さんにとってもファーストアルバムとなった「Will―心の華」。琴・尺八・パーカッション&ドラムス・チェロ・ヴァイオリン・ギター・ベース、そしてシンセサイザー、国境と音楽ジャンルを越えた楽器が一流のミュージシャンたちによって演奏されるインスツルメンタルアルバム。日本的な「間」の中に「情念」が音となって立ち上がってくる作品だ。

 保坂さんは語る。琴という楽器は絃1つ換えるのも大変で、管理に手間がかかるし音も小さいんです。とにかく制約の多い楽器です。ただ、演奏していると、自分だけにわかる余韻が自分に近いところで渦を巻いているのがわかるんです。それが前に押し出された時にこちらの心の奥底の声が人に伝わるんです。そして自分の曲作りも女性としての心の声を表現したいと思っています。そのメロディーは周りの環境や人々によって影響されたものではなく、自分の中に内包されているものが出てくるような気がします。

 ・・・・・
確かに保坂さんのファンは女性が多いようだ。彼女たちは自分の想いを保坂さんの音楽に投影しながら聞き、そして自分の心を表現し勇気づける「言葉」を探しているのかもしれない。

 保坂さんの活動はその後、国内各地のホールや都内ライブハウス、Washington D.C. 、Malaysiaでのコンサートツアーと広がり、2001年1月、セカンドアルバム「Shine―かい間見えるもの」をリリース。現在は3枚目のアルバムを製作中である。
(文:城川隆生)

今後の主なコンサート
・ 7月4日(木)邦楽ジャーナル倶楽部‘和音’(日暮里)
・ 9月7日(土)北沢タウンホール(下北沢)
・ 10月10日(木)、11日(金)喜多方プラザ文化センター(福島県)

ファーストアルバム
『Will-心の華』
JDNA2001
\2、800.(税込)
セカンドアルバム『Shine』JDNA2003
\2、800.(税込)
共立コミュニケーションズ(株)音楽事業部J・DNAホームページ


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